さて最近漆掻きを通して考えついていた一つの思いがあります。
それは人間と漆の関係は塗料や接着材としての利用だけでなく、癌等の病気に対処する関係もあったことについてです。漆は古代中国ではすでに漢方薬として利用されていたのはけっこう有名な話しです。今でも東アジア圏の民間療法には漆のことはいくらでも利用例があるそうです。昔のようにもっと漆が身近だった時代はひょっとするとどちらかといえば薬としての利用がメインだったのかもしれません。日本人の苗字にも漆畑さんや漆崎さんや漆山さんなどなどたくさんいられますから何も漆が工芸だけのものとして利用されていたとは到底思えないのです。
漆の付いた苗字
漆を掻いていて出てくる漆の様子をじっくり観察しているとどういうものかだんだんとわかってくるのですが、どうも漆はカブレることのイメージが強くて漆の液というのは漆を襲う外的に対する反撃要素として想像してしまうことがほとんどだと思います。
しかし実際漆液というのは漆の表層をかじり、さらに幹にとの境にさらに刺し傷を与えてやっとにじみ出てくるものです。ですから人間で言えば皮膚を掻いたくらいで出てくるようなものではなく、それこそ真皮を剥がしたらリンパ液もでるくらいの深い傷の時に出てくるもののようなイメージになります。
漆の木も漆液を出すのは攻撃のためではなく、傷んだ傷口を早く塞ぎさらに抗菌作用を出して体内に有害な菌が混入することを防ごうとして出すような反応な気がします。ですから漆の液を飲むと身体の中の毒素が抜けて浄化されるという言い伝えがあるようなことも頷けます。
人間の身体は常に菌にさらされていますが、普通は免疫力でそれらを駆逐するので身体が不調にはならないわけです。しかし癌もそうだと思いますが、その免疫力がなんらかの理由で落ちてしまうから不調に至るわけです。
私がたどり着いた考えというのは、漆を癌の薬として直接的に利用するということだけでなく、恐らく漆器とした時にもその効果が食物と触れることでなんらかの薬用を発揮しているのではないか?という仮説からです。
日本人の死因が癌メインになってきたのはそんな昔からではなく、統計的にも以前は他の死因がトップですが1981年以降は癌がトップだそうです。ね?そんな昔からではないですよね。そうなんです。昭和50年台くらいというのはたぶん日本人の生活様式が劇的に変化しだしている時代なのです。もうちょっと想像を膨らますと、漆器が我々の食卓から消えた時代とも言えなくはないでしょうか?
漆の塗膜面は人間にとって有害な大腸菌やノロウイルスだとかを培養しようとしても消滅してしまうという実験結果があります。それはもう確実なのでメンパで食べるとご飯が長持ちするよ。身体になるべく良い状態で食べ物が食べれるよと言えると思います。
さらに癌に効果があるとするならば、メンパで食べると癌になりにくいよ?なんて事が言える時代がくるかもしれません。ネット上にはすでに癌に対する抗癌剤としての漆の利用例なども見られますが恐らくはまだ特に実用されてはいないと思います。
癌と漆器の関係性を裏付けるデータは特にありませんが、我々の生活様式の変様と漆器の食器利用の消滅とのタイミングが重なるのはこういう仮説をあながち荒唐無稽とも言えなくはないのではないでしょうか?
いずれにせよメンパ屋にできることは、そうかもしれない?という想像を働かせて前向きに漆を育ててゆくこと。純度100パーの漆を塗ったメンパを作り続けて実証していくことだと思っています。
眉唾かもしれませんが、漆工や漆屋、漆掻き等漆に携わる人々には総じて長命だという都市伝説のような話もあります。確かに漆掻きの高橋さんの常人離れした体力も長命と漆との関係を裏付けるものかもしれませんね。
とまあ、そんな漆の事を別方面から考えてみたりしています。
今度とも井川メンパ大井屋の活動をご贔屓いただけば幸いです