やんばいでございます。井川メンパ大井屋店主の前田です。こんばんわー

さて年末から年明け進行の中、作業もほどほどにここ数日は溜まった読み物を読みふけっているのですが昔から気になっていたことにちょっと光明が見えたお話を少し。

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井川メンパを追い求めていく中で年々感じているのは、井川メンパ創成期のその意匠が今とだいぶ違ったんじゃないのかな?という推測から話を始めたいと思います。創成期っていうのは江戸時代以前の話です。具体的にははっきりしてないので中世のどっかということにしといてください。

現在大井屋でやっている漆塗りは技法という範疇で表現すると俗に言う溜り塗りという漆芸方法になります。弁柄等で木地を紅く染めてそこへ透明度の高い透け漆というものを塗っていくと漆の奥からほのかにワインレッド様の赤味が醸しだされてくるような塗りを総称して溜塗りというのですが、なぜ井川のご先祖が数ある漆塗りの技法からこれを選択したのかなかなか合点が行かなかったのです。

例えば同じ透け漆を利用した塗りでは飛騨高山あたりでは春慶塗りが盛んです。木曽のあたりは溜り塗りもあるし、春慶を踏んでいる塗りも見かけたりします。それこそ漆芸が花開いた江戸時代にはすでに数百種類の技法が存在したとも言います。ただ井川メンパはこの赤黒い塗り一辺倒なのです。実際はそれも時代と共に退化して近代はただ真っ黒に塗ってしまっているというのが現状だったのが私が習ったやり方でした。
その中で試行錯誤しながら自分で溜塗りを探って行く中でやはり技法書や海野メンパやもっと古いメンパの数々を眺めている中でどうも時代や作者によって大きく解釈が変遷しているなと感じていました。なので私も私なりの表現でいいんだと考えて行動して来たのですが、いやまてよ?原初はどうしてそうなった?という命題がぽつねんと湧き上がってきました。別にどれが井川メンパでどれがそうじゃないというつまらない議論はしたくないのでいっそ原初の風景を追い求めることにしたのです。

なぜあのような日本のマチュピチュみたいな僻地において弁柄を求めて溜塗りをしたのか?本当に弁柄だったのだろうか?弁柄を自作していたのだろうか?流通で手に入れていたとしてコストは合うのだろうか?などなど夢想してイメージしていたのですが、井川の後ろにそびえている赤石山脈は読んで字のごとく赤石でできている。という話を聞きほんまかいな~?で止まっていたのですが、南アルプス深南部を掘っていく途上で赤石というものが本当に割りと鮮やかに赤い鉱物であるということがわかりました。このあたりでもしや・・・と思い始めた大井屋でございます。赤石についてはぜひネットで画像検索してみてくださいね。

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赤石が赤いのはその成分がラジオラリア板岩という古代のプランクトンで出来ている珪質岩。そう珪藻土と漆の関係がここで出てきます。漆は珪藻土と非常に親和性の高い使われ方をしてきており、昔の職人はそういう山の岩質をも理解していただろうと思うと絶対こっち使ったんじゃね?ということなのです。井川でこういう赤味漆の塗りが花開いたのはひょっとしたらこの赤石を古代は利用したのではないのか?というのは結構近からず遠からずだなと。その赤石塗りがいつの間にか世に遍く普及した弁柄を使った溜塗りへ変遷したのかと思ったのです。

まあこれは単なる私の推察なので実際にはそれをやってみないとどんな風合いに成るのかはわかりませんけれど、ただ下地の染材としてだけではなく蒔地にしてみたり石目塗にしてみたりしてもいいと思います。面白いのはここにしかないという素材でここにしか無い井川メンパという存在意義をまた一歩獲得できるやもしれませんということです。来年はこのあたり掘り下げて行きたいですね。そしてそういう塗りのメンパもちょっとは作って行きたい。この静岡の山奥でしか手に入らない素材で唯一無二の漆塗りをやって行く。浪漫ですね〜

ただ残念なことにこの赤石というのは井川よりもさらに高山帯にあるわけです。ガチの山登りの人らが行くフィールドにあるわけです。私の緩んだ身体で取りに行けましょうや?ということで来年はダイエットから始まるでしょう。待ってろ山の上!!!もしくは誰か採ってきてくんない?もしくはおんぶしてくんない?意志薄弱がモットーということなのです。名乗り出そうもないので取り急ぎダイエットから。
そんなこんなで年末感増して来ています。面白い木の話や山の話などお持ちの方はぜひご教授いただければ嬉しいです。今後とも井川メンパ大井屋の活動をご贔屓いただければ幸いです。

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メンパの塗り直しは2月8月にまとめて行っております。塗り直し代金はSサイズ3千円から
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