やんばいでございます。川根本町大井川鉄道千頭駅前井川メンパ大井屋店主の前田です。こんばんは
さて本日は9月制作分の丸メンパ仕上げの透黒目漆塗りでした。無事全てを塗り終えて見なおしてみましたが、今回は集中力を保てた気がします。これからも精進精進で行きます!
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そして今日作業しながらふと考えていたこと。

それは、漆塗りは刷毛塗りから変化すべきなのか?ということ。
これけっこう重要な問題だと自分では思っております。私は30歳過ぎくらいの時に実家の家業が板金塗装だったので事情により1年少し自動車の塗装を仕事としてやっておりました。いわゆる吹付け塗装ですね。イオンブースに入って吹付けをやっていたので、今やっている漆塗りとは対局にあるような塗装をやっていたわけです。

井川メンパをやっていく中でかつてのその経験を活かして漆でも吹付け塗装はできないものか?と幾らか調べてみたりしてみたわけです。修行時代にたまたま飛騨高山春慶塗のとある製造元にお話を伺った時にはご主人から漆の吹き付け塗装はやっていると聞いた経緯があったので自分でも模索はしていました。印象的だった言葉が「始めようとした時に先輩の塗師さん達からはとても毛嫌いされて駄目出しされた」と仰ってました。
確かに刷毛塗りこそが伝統だと思い込んでいる塗師さんはいて、というかたぶん刷毛塗りしかやったことが無いからだと思うのですが吹付け塗装を全否定されることは他でも聞いたことがありました。

なにをもって正解か不正解かは判断しずらいのですが、刷毛塗りと吹付けにはそれぞれ特性がありそれらをもう一度見なおしてみる必要があるなと思っています。

吹付けの利点としては、やはりなんといっても作業性が良いということ。素早くたくさん広い面積が塗れますよね。そして塗面が均一で均等に綺麗に見えやすいと思います。刷毛塗りですと刷毛目がついたりしますし、作業の量は格段に劣ると思います。これだけ取ってみると吹付けの方が断然良いような気もしますが、採算性や経済性を考えれば確かに吹き付けの方が断然有利だと思います。
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親父と一緒に自動車の塗装をやってたころの写真が出てきた。懐かしいですね。私が継がなかったので親父が始めた板金塗装業も親父の代で終ってしまいました。何故か息子はメンパ屋になりました。

話がズレましたが、大井屋的には吹付けの利点よりも弱点の方が漆塗りには適さないと最近は考えるようになりました。

まず吹付けの場合塗料のロスが必ず生じるということ。どんなに熟練工でも、どんなに良い機材を使っても飛び散って無駄になる分が必ずでるのが吹き付け塗装です。
これは自分が最近漆掻きを始めるようになって確信に変わったのですが、漆は一滴たりと無駄にはできないということ。先日、漆の一滴は血の一滴と謳ったように本当に苦労して採るものであり且つ漆の命を貰っていることを考えればこの一点をもって

漆塗りは絶対に刷毛塗りで行う

そうのように決心しました。絶対に無駄にしたくないので吹付けはやりません。時に我々は損得を越えて判断しなければいけないことがあるのですが、これはまさにこだわりを超えた自然との契約だと思います。そういう精神がなければいつかは井川メンパは途絶えるとさえ思いますので、ここは今後の人間にもそう伝えていきたい変更不可事項にしようと思っています。

また吹付け塗装は漆のような粘性の強いものは有機溶剤などで希釈してやる必要があるかと思います。作業者の健康問題ならず、メンパのような口に入るものの塗膜面には絶対使いたくないのもあります。大井屋では一切の有機溶剤は使用していませんので、この観点からも吹き付けの選択は消えました。

ということで今まで通り漆刷毛でやって行きます。
そろそろ泉清吉さんの新しい刷毛が欲しくなってきたところ。漆刷毛についてはまた後日語りたいです。刷毛塗りというのはかなり癖が出やすいと思いますが、だんだんとそのあたりの加減にも意識が向き始めたメンパ道4年目。もう少し楽しんで行きたいと思っています。

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今後も井川メンパ大井屋の活動をご贔屓いただければ幸いです