やんばいでございます。井川メンパ大井屋前田です。こんにちわ。
さて最近とても寒い毎日ですが、川根本町に住んでみて分かったことは同じ町内でも集落ごとに気温や気候がかなり違っていることです。
深い谷や大井川の蛇行で細かったり広かったりする川幅は千差万別の気象条件をつくるようです。雨が多い地域、冷やおろしといって山から冷たい風が吹き込む風の強い地域、日当たりが良く風も無い地域、雪がとにかく降る地域。車で2.3分の距離で雪国だったりするのに自分のところは何もないということもあったり。標高差でもかなり違いますね。山の上と下では北海道と九州くらい違うかもです。

昔はそういう気象条件に併せていろんな在来作物がたくさんあったと思います。今でもそういう種は眠っているはず。誰かがそれを掘り起こしていく。そんな時代が来るかもしれませんね。川根はこういう地域の気象特性からいろんな希少種があるはずです。興味のある人はぜひ挑んでみてください。


さて今日のお題は【メンパの語源について】です

これについては自分も井川メンパをやるにあたってずっと探ってきたことですが、最近になっていくつかわかってきたことがあるので報告しておきます。
まずいわゆる木を曲げて器にする曲物と総称される木地について、全国的な認知は恐らく(曲げわっぱ)であろうかと思います。テレビやメディアでは曲げわっぱと呼ばれることが多くワッパというのが一つの名称として認知されていると思います。
ではなぜ井川ワッパではないのか?私も最初はそう疑問に思いました。そもそもメンパと呼んでいる地域というのはどうやらこの静岡と南アルプスを超えた長野県、山梨。このあたりでメンパと古くから読んでいたようです。木曽メンパというのがあって、奈良井や妻籠などでメンパとして売られているものがいくつかあります。漆の塗りはだいたい摺りが多いようです。私のところにも毎回いくつか井川メンパと信じて使っていたということで修理依頼がありますが、木曽メンパについてはどうしてもという以外は受け付けておりません。技法が違うので作業効率が悪くなってしまうので格安の同じ値段で塗り直しはできませんのでご了承ください。

この中部山脈地帯周辺ではどうやら曲物のことをメンパと呼んでおり、その敬称はここ独自の文化圏で共通された呼び名だったようです。ワッパと呼ぶのはほとんどが東北の産地になると思います。伝統工芸として秋田は大館の曲げわっぱというのがありますが、それを代表に東北文化圏ではワッパと呼ぶようです。

その辺りについて修行時代に師匠の望月栄一氏に伺いましたが、語源についてはまったくわからないとのことでした。面が映るほどに綺麗な輝きなので、面がぱっと映るからメンパと呼んだという話しはあったいたいですがそれはたぶん売り文句だろうと言ってました。私もそう思います。
2015年ごろの修行時代その辺りが知りたくて図書館でいくつも本を読んで探ってみたところ、とある古い本に井川メンパはその昔【井川メッパ】と呼んだというくだりを見た覚えがありました。師匠に聞いたところそのような呼び名で呼ばれていたのは記憶にないと言っておりました。ですから仮にそう呼んだのであれば戦前以前の話しになると思います。

メンパ→メッパ→ワッパ

確かにちょっと発音的に共通する部分があるなと思いましたが、なにか証明することもできずに数年が経ちました。先日ふと思い立ちメッパで検索していたら奈良県の十津川郷の方言で曲物のことを総称してメッパと呼んでいたというのを見つけました。リンクを貼っておくので興味ある人は見てください
十津川のメッパ

なるほど。ということですね。静岡の井川も奈良の十津川も近代までは人の出入りが困難な地域で、古い大和言葉が残った場所です。メンパが古いのか、ワッパが古いのか、メンパが古いのか?そこら辺は定かではないですが、どうやらどれも一つの言葉から派生したのだろうと推測できます。

なので私は今後【駿河井川の曲りメンパ】と呼ぶことにしました。
東北の曲げワッパは杉の白木ですが、静岡の曲りメンパは檜の溜塗りなので意匠がかなり違います。

またメッパという呼称が今後消えてしまうことが非常に残念に感じており、メンパとは違うラインということでお櫃などはメッパと呼んでいこうかと思っております。今春よりお櫃を仕込み始めましたので、春の連休くらいにはお店にメッパ並べられたらと思います。

ちょっとマニアックな話しでしたが語源について聞かれることが多く、自分なりに現時点でわかり得たことを書いておりますので、今後また何か新しい知見が増えれば報告していきたいと思います。


さて写真は先日参加させていただきました千頭敬満大井神社春の大祭で神楽を奉納いたしました。実は川根の中でもあまり知られてないようですが、千頭にも神楽があります。私はこの社の氏子になると共に千頭神楽保存会に所属しまして、笛をやっております。年に数回ですが地域の皆さんと一緒に神様に近づけるそんな日々というのもとても心に響くものです。観光客はほぼこないローカル特有の神事ですが、ご興味ございましたらまたお尋ねいただければ時期になればご案内致します。メンパと重ねて神楽もどうぞよろしくお願いします。

天狗さんは地域の若手男性が持ち回りで担当します。中身は実は千頭の消防団長さんです。背が高いので似合ってました。
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